プロローグ
不可思議の岐路の果てに
 


 不可思議の岐路の如く待ち受ける数多くの選択。
 光と闇が普く先は深き霧が立ち込めているかの様に何も見えず、道の存在すらも解せない。
 与えられた僅かな標を以って自らの道を見出せた者は先に見えた光を掴む。
 先人の足跡を見い出した者達も後を追う様になる。
 やがては、それが一つの正しき道として見い出される。



 だが、意を解せずして逸れてしまえば再び混迷へ落ちる。
 迷い子となって闇を彷徨い、嘆きの内に苦しみ、そして無念の内に滅び逝く。
 それを耐えた強き者達にもまた二なりの道が待ち受ける。

 死地を乗り越えた果てに、神に近しき者として崇められるか。
 地を這い続けた果てに、人に仇なす獣として蔑まれるか。



 光の中に享受された子らは、願いのままに生ける事を許され
 闇へと拒絶された者達は、咎と共に翻弄される事を強いられる。


 連なる道は決して光と闇のみにあらず、各々が宿す形の個の生の軌跡を辿る。
 だが、その星々の如き数多の閃きは、宿す器より溢れ出て全てを留め置く事は叶わず忘却の彼方へと消え去っていく。


 光の中の闇
 闇の中の光


 世界に反をなす存在は、ほんのひとときの間、その在を強く指し示す。
 やがてはその内に満たされた秩序の内に葬り去られる。
 如何に強く輝ける光とて、より強い闇を照らし出す事は叶わない。
 如何に暗く佇む闇とて、光に満ちた内では何もその懐に呑み込めない。

 理を超える事は許されない。
 それは大いなる滅びを招く災いによっても覆される事なき絶対の則。
 秩序が約束された世界の内に、数多の生ける者が平穏の内に存在し続ける。


 幾筋もの道が在ろうとも、向かいし先は定められた大いなる流れ。
 引かれた一線を超えた者達は、一人として赦されずして虚空へ墜ちる。

 在を示す全てのものが無き空間―自らを否定する世界に抗う力も与えられない。

 己が本質を棄てて遵守したとて、ついには力尽きて無の中に帰す。
 望まぬ道を行く事を強いられるままに、ただ死を待つだけの生。
 それはやがて、絶望の形となって暗き闇を生み出す事となる。


 絶無の内に朽ちるまでの永劫を、魂を苛まんばかりの絶望と共に…


 輪廻の如く幾度となく繰り返される同じ苦しみ。
 限りなく続くその試練に耐えられる者などおらず、一人、また一人と闇へと消えていく。
 ただ、嘆きの声だけが余韻を残して黒の中へと弱弱しく響き渡るだけであった。


 地獄と呼ぶに相応しい己が闇の中から自ら抜け出す術を知らぬ哀れな者達。
 その様な彼らがやがて望み得たもの―それは…


 自らを受け入れないこの世界を滅ぼし、全ての恵みを我が物となす力であった。


 全ての秩序を司る理に叛く禁忌、この闇に落ちた誰しもが一度は願った事であった。
 やがてそれは大きな歪みを生み出し、全てを覆す大いなる流れとなっていく。
 果てにはその力は、世界そのものを呑み込む闇と化した。




DRAGONQUEST III 二次創作作品

〜求めし道 Revise〜

Author ヒジリ

原作 DRAGON QUEST III
For SQUERE ENIX





 その影は、過酷なる運命に打ちひしがれし人の子達の側にも、迫ろうとしている…。