魔境 第二話

〜ネクロゴンド 霊峰〜

 天を衝く様な高さの山に囲まれた岩山…

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 その上空で、黒雲が漂い、内に金色の煌きが閃くと共に、雷鳴が天地へと響く…

「ハッ…、俺様に力で勝とうってのが間違いなんだよ。」

 眼前に灰燼が舞い散る中、サイアスは勝ち誇ったようにそう言い放った。
「…ほぇえええ…。レフィルちゃんのヤツとは一味違うのぉ…。」
「あったりまえだ。俺様のが正真正銘の”勇者の呪文”なんだからよ。ま、資質の問題だから、こればかりはどうしようもねぇんだな。」
「…へぇ、モヤシもゴチャゴチャ言いおったケド、そんなモンなんやね。」


 電撃の呪文 ライデイン

 伝承上の勇者が用いたと伝えられる、未だ多くの謎を残す呪文。
 使える者自体は数多く、呪文の資質が無い者でも習得は容易。
 しかし、その多くが発動すら出来なかったり、扱いきれぬ力であったりと
 用を為さぬものであり、真の力を目にした者は数少ない。


 レフィル達と共に旅を続け、ムオルの村で滞在していた時、カリューはニージスからライデインについて色々聞かされていた。特に、ライデインが発揮する能力には個人差があり、時に制御出来ずに自らを傷つけるなど、問題の多い点を強く指摘していた気がする。
―…レフィルちゃんのは不完全、って事でええんやろか。
 吹雪の剣を手にする前に、レフィルが放った雷鳴による衝撃。雷そのもので焼き尽くすサイアスの真のライデインとは明らかに違う一撃。それらは一体何を意味しているのか…。
―ま…えっか。レフィルちゃんはレフィルちゃんやし。
 一人気ままに旅している最中、ポルトガ以来、成り行きで付いて行ったものの、気がつけば彼女の事を気に入っていた。
―もう少しの辛抱や、レフィルちゃん。わてらが必ずバラモスとやらぶっ飛ばしたる。
 勇者どころか…旅人としても未熟で危なっかしい面を見せるレフィルを守ってやるために、側についていたつもりであったが、今はこうしてサイアスに付いて来ている。彼女を戦いに巻き込む事なく全てを終わらせようと、これまでも同じ様な事を心のどこかで思っていたのかもしれない。

「で…この先に進めって?」

 岩山の一角に大きな洞窟があり、その中には、奥へと続く石段によって道が繋がっていた。
「…山道の一つみたいね。でも…外れだったら…」
「んな心配してるヒマなんかいらねぇよ。そんときゃ全部吹っ飛ばしてでも道作ってやらぁ。」
 魔の王と対峙する前でかなり気が昂ぶっているのか、サイアスが愉快な顔で物騒な事を言い出すのを見て仲間達は肩を竦めながらも、彼に続いて洞窟へと足を踏み入れた。


〜ネクロゴンド 平原〜

「魔物だ!!」
「出やがったか!!」

 ネクロゴンドへと踏み入った数多の冒険者達の内の一つのパーティに、巨大な影が立ち塞がる。
「トロルだ!!」
「気をつけろ!まともにぶつかりゃ一発でお陀仏だ!」
 四人はその褐色の巨人を見て、素早く行動を開始した。トロルが突進してくるタイミングを見計らってすぐに散開する。
「よーし!いいぞ!!」
 そして、全員で一気に四方を囲んだのを見て、大剣を背負った巨漢が、反対側に位置する男へとそう叫んだ。

「イオラッ!!」

 それに呼応する様に呪文の調べが平原へと響き渡る。

ズガァーンッ!!

『グガァアアアアッ!!!』
 直後、呪文によって引き起こされた爆発がトロルを飲み込んだ。
「やぁあああっ!!」
「喰らえっ!!」
「どぉりゃああああっ!!」
 魔物が衝撃で怯むと同時に、女性冒険者の剣が一閃し、身軽な少年が投じたナイフが鋭く突き刺さり、戦士が振り下ろした大剣が肉を切り裂いた。
『ガァアアアアアッ!!!』
 四方からの攻撃に応じる術もなく、トロルは血飛沫を上げながら地面に膝を屈した。
「おっしゃああ!!今だ!!」
 それを見て、四人は一気に間合いを離した。

「ギーア・ミガン・ベルザ・セロン・…」

 同時に呪文を唱えた魔法使いの男が目を伏せて、意識を集中しながら呪文の詠唱に入った。彼を中心として、光り輝くルーンがいくつも旋回し始める……

「…イリアっ!!危ない!!」
「…!!」

 だが、女の叫びと共に、彼の集中は途切れた。

「な…に…!?が…はっ…!!」

 気付いた時には既に遅く、魔法使いは金色のフォークにその身を貫かれて血反吐を吐きながらその場に崩れた。
「イリアッ!!…このっ!!」
 女剣士の剣が仲間を傷つけた緑の悪魔を一刀の元に斬り捨てる。
「待ってて!!すぐになおすからっ!!」
 魔物を屠った後、彼女はすぐさま倒れた男のもとへと駆け寄り、掌を彼へと向けた。そこから癒しを司る淡い光が灯る…。

ズンッ!!

「…っ…!?…ぁ…っ!!」
「キャロル!!」

 しかし、不意に後ろから猛烈な衝撃を受けると共に、自分の体が大きく吹き飛ばされ、地面へと勢いよく叩きつけられるのを最後に、その意識は完全に失われた。


〜ネクロゴンド 海峡〜

 荒れ狂う海峡を進む一隻の小さな船。それを目掛けて空の上から、海の中から…或いは海峡の両側から次から次へと無数の魔物が現れた。

バチバチバチッ!!ドゴォッ!!

―キリがない…!!
 雷の杖で数体の魔物をまとめて撃ち落としながら、ホレスは舌打ちした。
「くそ…っ!!」
 辺りの海域には、無惨に砕かれた数多くの船舶の残骸が波に揺られて漂っている。

「イオラッ!!」

 遠くで唱えられた呪文と共に水しぶきが上がり、船に取り付こうとする魔物達がまとめて吹き飛ばされるのが見える。

「…えっ!?」

 しかし、その直後…呪文を放った張本人が、それを乗り越えて現れた魔物の姿を見て小さく悲鳴をあげた。
「ガメゴンかっ!!くそ…こんなときに…!!」

 ガメゴン
 竜の五体と亀の甲羅をもつ異形の魔物。
 甲羅による強固な防御力を有し、多くの攻撃を受け止めてしまう。
 また、竜族にも劣らない力と、炎のブレスをも操るため、長期戦は不利。


ガッ!!

「…っ!?…効いて…ない!?」
 レフィルが振り下ろした吹雪の剣は甲羅に阻まれ、ガメゴンを一撃で倒す事は叶わなかった。

「いいや、効いている!!そのまま押し切れ!!」
「!」

 しかし、ホレスが叫ぶと共に、レフィルは今の一撃で与えた箇所を注視した。吹雪の剣の傷跡から氷が発生し、甲羅を押し広げている…。

ガキンッ!!

 すぐさまそこに吹雪の剣が突き立てられる。

パキパキパキ…ガシャンッ!!

 氷の魔力が体内へと入り込んで内側から凍りつき、ガメゴンは粉々に砕け散って絶命した。

「まだ…いる…!」
「……なにっ!?」

 飛び掛ってくる魔物に応じながら、ホレスはムーが指を差す方を向いて絶句した。
―また…三匹!!
 一匹でも十分手間取ったのに、今度は三体のガメゴンがこちらへと接近してくる。

「ルカナン、バイキルト」

 彼らを見据えながら、ムーは呪文を唱えると共に、すぐさま新手の魔物の群れに向かって飛び掛った。

ガキンッ!!ゴンッ!!ガンッ!!

「!」
 しかし、その殴打は全てその硬い体に阻まれて全て弾き返されていた。
―呪文が…効かない…!?
 防御力を弱めるルカナンの呪文が通っていないのであれば、ガメゴンの甲羅はバイキルトが通った理力の杖すらも通さないのだろうか。

ゴゥッ!!

「「「……!!」」」

 そして、三体が船へと至ると同時に、彼らの口から吐き出された炎が船体を焼き、瞬く間に燃え広がった。

「ムーッ!!」

 ホレスは海原の先に広がる陸地を指差しながら、そう叫んだ。

「マヒャド」

ビュォオオオオオオオオオッ!!
パキ…パキ…パキ……!!

 彼が示した事を理解できずとも、今自分が為すべき最善の事はすぐに実行できたらしい。ムーが放った極寒の冷気が、瞬く間に海原を凍りつかせていく。

「走れぇっ!!」

 氷に覆われた海へとすぐさま飛び降りながら、ホレスは二人へとそう叫んだ。近くから飛び掛ってくるマーマンダインとヘルコンドルを隼の剣で斬り捨てながら、彼はレフィル達を促した。


〜ネクロゴンド 開かれた道〜

「ここが…」

 大地の神によって冒険者へと開かれた道を前に、レフィルはただ立ち尽くしていた。
「ネクロ…ゴンド……」
 左方に見える”死の火山”…そこより流れ出た溶岩流が冷えて固まってできた新たなる道…その先に見える広大な草原…。

「…何だろう…この感覚は…。」
 一見すると、今まで旅してきた平原と何ら大きな違いは見受けられない。しかし、レフィル達には、そこに漂う尋常ならぬ程の恐るべきものの存在を感じていた。

「行こう。」

 それでも、レフィルはもう呪われた宿命から逃げ出そうとせず、二人にそう声をかけながら真っ直ぐ前へと進んでいた。


〜ネクロゴンド 平原〜

「くそ…っ!!死ぬな…!キャロル…!!イリア…!!」

 無惨に斬り捨てられた褐色の魔物の骸の側で、戦士は傷ついた二人の仲間に手当てを施しながら必死に彼らに呼びかけ続けた。
「エルロイ…!このままじゃまずいぞ!…引き上げた方が…!」
「ああ…分かってる…!クソッタレ…!!なんてとこだよ…!ここは…!!」
 巨額の賞金を勝ち得るために、ネクロゴンドへと身を投じたことが軽率であったのか。この魔境へと中途半端な覚悟で踏み込んだために、仲間の命を危険にさらしてしまった浅はかさを悔やみ、戦士は地面に拳を思い切り叩きつけながらうめいた。
「キメラの翼は…あるか?」
「ああ…、確かイリアの荷物の中に……ぁっ!!」
 仲間の少年に尋ねられて戦士が後ろを振り返ったその時、彼はその表情を驚愕に歪ませた。

「あいつ……!!」

 そこにいたのは、先程魔法使いを刺した魔物と同種の存在、ミニデーモンであった。そのフォークの先には探していたものがもてあそばれている。戦士はそれを見て、すぐに大剣を手にミニデーモンへと斬りかかった。

『メラミ』
「!」

 同時に、ミニデーモンが呪文を唱える。それで一瞬怯んで戦士は攻撃に備えて身を固めた。だが、それは彼を狙ったものではなかった。フォークの先に吊るされた荷物が、一瞬にして炎に包まれた。

「…あ……ああああ…っ…!!」

 その中から、キメラの翼がハラリと抜け出し…それもまた、悪魔の炎によって焼かれて…黒き消し炭と化してボロボロに崩れ去った。

「がぁあああああああああっ!!!」

 最後の希望を嘲笑いながら踏みにじった緑の悪魔に、戦士は激昂のあまり我を失った。
「殺してやる…!!」
 離れてその光景を目にした少年もまた、完全に激情に囚われて、ミニデーモンに向かって躍りかかった。しかし…

ドゴォッ!!

「…っ!!」
 目の前を遮る様に、トゲ付きの大きな棍棒が地面に叩きつけられた。

「「邪魔…するなぁああああっ!!」」

 その新手の魔物を冷静に見ることすら叶わず、二人はそれに向かって各々の武器を手に襲い掛かった。

『ヒャダルコ』
「「……!!」」

パキ…パキパキ…!!

 しかし、それが命取りとなった。
「う…動け…ねぇ……!!」
 近くに浮かぶ、蒼い雲の様な魔物、フロストギズモが唱えた呪文により、彼らの動きは完全に封じられていた。
「くそ…くっそぉおおおおおっ!!」
 血の気が引いていく中で見せ付けられる絶望的な状況に、戦士はそう吼える他に何も出来なかった。
『ガァアアアアアアッ!!!』
 そんな彼らに、トロルは勢いよく棍棒を振り上げて、一心に地面へと叩きつけた。


「アス…トロンッ!!」


ズンッ!!

 しかし、その瞬間…彼らの目の前に誰かが割って入り、巨人の一撃を受け止めていた。だが…手にしていた左手の蒼い魔剣はその手から離れ…空を舞い…

ザクッ!!

 遠く離れた位置へと突き刺さり、迸る冷気が周囲の草むらを氷の内に閉ざした。
「…ぁ…っ!?」
 予想以上の攻撃力によって、自分を守るべき武器は手元から離れた。レフィルは唐突に訪れた危機に息を呑んでいた。
『ゴァアアアアアアアッ!!!』
 人の子よりも遥かに大きな体と力を持つ褐色の巨人―トロルの咆哮が天に轟く。その雄叫びと共に、トゲのついた棍棒がレフィル目掛けて振り下ろされた。

「させるかっ!!」

ガンッ!!

 だが、それが彼女へと牙を剥こうとしたその直前で、一人の男が割って入った。
「…ホレス!」
 呪われし仮面が持つ圧倒的な結界の呪力、その力により…豪腕を有する魔物にも勝るとも劣らぬ絶大な守りの力を手に入れる事が出来たのだ。それが、トロルの棍棒とパワーを上回る結果となった。
『ムー!!』
 棍棒をその体で受け止めた状態のまま、彼は天に向かってそう叫んだ。

「ルカニ、バイキルト」

 すると、小さくポツリと呟くような声で呪文を唱えながら、一筋の影がトロル目掛けて落ちた。

ドゴッ!!

『グ…ガァアアアアアアアアッ!!』

 敵と自分に施す呪文と、空から渾身の一撃でトロルを打ち据えた後、ムーはすぐにその場を離れた。
「今だ!レフィル!!」
「…ええ…!」
 自身は近くに倒れる傷ついた者の手当てをしながら、ホレスはレフィルへと叫んだ。
「……これを…使うときが…。」
 彼女の心に僅かに迷いが生じる…。それを他所に、その右手は…背中へと掛けられていた。

「…もう…後には引かない……!」

 そして…鈍い光沢を刀身に宿した、大振りの長剣がレフィルの右手に収まった。


 バスタードソード

 二つの国の相反する技術を結集した数多くの剣の総称。
 総じて優れた性能を持ち、使い手の力を最大以上に引き出す名剣。


 鋭い切っ先と鍛え抜かれた刃には遊びが無く…純粋に戦うための武器と言えるつくりの頑丈な鋼鉄の刀身を支える柄にはアリアハン・サマンオサ両国の紋が刻まれている。まさしく、世界を代表する二つの大国の全てが込められた、究極の一振りであった。

―…全部…終わらせる…!!!

 心の内にある全ての想いを剣に乗せた瞬間、レフィルの目つきが変わった。

『ガァアアアアアアアアッ!!!』
 ついにその姿を現した最強の剣を見て何を思ったのか、トロルは再びレフィルへと襲い掛かった。
「………。」
 しかし、その荒ぶる武神の如き褐色の魔物が迫ってきても、今度は全く動じなかった。

キンッ…!!ゴトンッ!!

『!?』
 直後、振り下ろしたはずの鈍重なる棍棒のトゲ付きの頭の部分が地面に落ちると共に、その持ち主たるトロルもまた、地面に呆気なく崩れ去った。
「………。」
 氷のように冷たい視線で紫の瞳が絶命した魔物を見下ろす。その巨体は斜めに綺麗に両断されて、活動を完全に停止していた。
 
『メラミ』

 そうしているのも束の間、今度は緑の悪魔が呪文を唱え、火球を作り出してレフィルへと投げつけた。しかし、彼女は特に慌てた様子も無く、その攻撃に備えていた。

「ベギラマ」

 そして…そう唱えると同時に、剛剣を下段に構えて左手を添えたその時、彼女の体へと炎が迫った。

ブワッ!!

 だが、それはレフィルへと直撃する直前で左右に分かたれて、そのままあらぬ方向へと飛んでいった。

「…そんな…もの…で…」
 表情を闇に閉ざされたレフィルの頭上で光が見える。それは、希望の象徴としてはあまりに鋭く、あまりに強く…そして、あまりに危うい輝きを放っていた。
『く…く…く…く……来るなぁああああーっ!!』
 ベギラマの煌きを極限まで高められたものを刀身へと宿した剛剣―バスタードソードに本能で恐怖を感じ取ったのか、ミニデーモンは引きつった声でそう叫んだ。直後、必死の思いで繰り出した無数の火球がレフィルへと殺到した。

「………。」

 しかし、彼女はそれらの攻撃が間合いに入ると同時に輝く刀身を巧みに翻して…自らに牙を剥く前にことごとく斬り捨てる。そして、ゆっくりとミニデーモンとの距離を詰め…

ゴッ……!!

 あまりに無慈悲な裁きの如き光の一閃を以って、レフィルはミニデーモンの存在をこの世から一瞬にして葬り去った。

ビュオオオオオオオッ!!

「……!!」
 緑の悪魔を滅した時、不意にレフィルの背後から冷たい暴風が吹きつけた。
「まずい…!レフィル!!」
 身に纏った緑の鎧の随所に氷が張り付く中、遠くから焦った様子のホレスの声が聞こえてくる。彼は近くで倒れている冒険者達を差し置いて、こちらへと駆けつけようとしていた。

―…大丈夫……だよ…。この旅が…終わるまで…わたしは……

 体を引き裂く鋭い冷気が吹き荒れる中、その様な思いを胸に、レフィルは吹雪の根源の方へと振り返った。

「…!」

 水鏡の盾を正面に構えつつ、彼女はその体をゆっくりと…しかし、着実に前進させていた。
「レフィル…!?」
 そのあまりに信じられない状態に、ホレスは呆気に取られていた。
―…あのドラゴンメイル…まさか…あれ程まで…!
 一瞬で生命を凍てつかせる程のフロストギズモの放つ凍気を受けながらも、レフィルの歩みは止まらない。身に纏う竜鱗の鎧が彼女の身を守っているのか…ダメージを受けている様子もない。

ボゥ……ッ!!

 そして、右手に握られた光り輝くバスタードソードの切っ先が捻りを加えて前に突き出され、その先端が触れた瞬間、フロストギズモはその点を中心に爆ぜ、レフィルの前方へと四散して、完全に消滅した。

「………。」

 三体の魔物が僅かな間で屠られた様に怖れをなして逃げ出したのか、辺りに潜んでいた魔物達の気配が消えている。残っているのは、滅光を放つ剛剣を手にし、竜の鎧に身を包んだ少女だけだった。