凶星 第六話

「………。」
 ムーはただの棒切れとなった理力の杖の柄の一番後ろを持ち、剣の様に構えている…。
「…ふ…くくくく……」
 紙一重で一撃をかわしたものの王冠を弾き飛ばされて、頭からは僅かに血がにじんでいた。…が、それに対して苦しみや痛みを感じた様子は全く無く、それどころか…。
「ハーハッハッハッハッハッ!!!これは愉快じゃ!!やはりこうでなくては面白くない!!」
 王はついに笑いをこらえる事が出来なかった。
「…」
 理力の杖は、そもそも力の弱い呪文の使い手の魔法使いが、呪文を封じられた時に戦える様にするために作られた武器であり…
「……うるさい。」
 ムーは一気に間合いを詰めて、大きく振りかぶった柄を一心に振り下ろした。
カラン…
 しかし、それは半ばより王剣によって斬られて使い物にならなくなった…。が…
「…ムゥッ!?」
 とっさにもう一つの得物…炎のブーメランを抜き、間髪入れずに王へと斬りかかった。
「それが愉快と申しておる!!」
「…あなただって同類。」
 ムーは間合いを切った王に手にした武器を投げつけた。
「出会い方が良ければそなたは我が忠実な僕となっておっただろうに!!ハッハッハッハッハッ!!!」
 攻撃とともに紡がれた彼女の言葉に、王は何とも嬉しそうに笑い出した。投げつけられた炎のブーメランを王剣の背で受け、そのまま持ち主へと返しながら…。
「マヒャド」
 それをかわしつつ、ムーは攻撃呪文を放った。
「メラゾーマ!」
 ムーが放つ氷の奔流と、王が撃った巨大な火球がぶつかり合った。
「私は魔王の家来になんかなるつもりはない。」
 前方に手をかざしながら、ムーは王に向かってそう告げた。
「……やっぱりか!!…魔物なんか操ってるからもしやとは思ってたが…!!」
 その言葉を聞いたカンダタは、改めて目の前の王者たる風格を持つ者の持つ、異様な雰囲気の正体を悟った。
「………かぁっ!!」
 王が一喝するように叫ぶと共に、メラゾーマの勢いが増し、マヒャドを正面から打ち破った。
ドドドドドドドッ!!!
 熱された氷からなる蒸気が爆発を起こした。
「フバーハ」
 すかさずムーは防御呪文の一つであるフバーハを唱えると共に、前方に魔法の盾を浮かせて、マヒャドによって威力が減殺された火球本体の攻撃を受けた。
ドドドドドドドッ!!!
 やがて爆発がムーを飲み込んだが、視界が晴れると…彼女が何事も無かった様に立っている姿が確認できた。
「…マホカンタじゃ防ぎきれないと踏んでそう来たか。」
「……。」
 マホカンタはあらゆる呪文を跳ね返せるが、呪文が起こした事象の一部は跳ね返せない事がある。…呪文によって巻き起こされた高温や、それ同士の相互作用が引き起こす衝撃等がその一例である。その為か、強力だが過信が出来ない防御呪文として知られている。
「お前が魔王というだけに…随分な呪文の使い手じゃねえか。」
「…魔王というのは例えばの話。アレは偽物…或いは…」
「……だろうな。…アイツ、俺らをバカにしてやがるのか…!?」
 全力を出していない…それがムーが言いたいこと…そしてカンダタが悟った事…
「……左様。この程度の腕前でワシを本気にさせよう等片腹痛い…!まして…」
 王は左手をムー達に向けてかざした。その手のひらから…
シュゴオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
「!」
 全てを焼き尽くす程の勢いを持った激しい炎が放たれた。
「ムーッ!!危ねぇっ!!」
 カンダタに注意を促されても、ムーには魔法の盾とフバーハの防御の内でその炎を耐えしのぐしかなかった。
「…この魔王バラモスの前にまともに立つことすら叶わぬわ。そなたとて、ワシの意思で生かしているに過ぎん。」
 炎が収まると、服の所々が焦げた状態ながらどうにか立っているムーの姿があった。
「さぁ、大人しく我が意に従え。さすれば…」
 王…否、魔王バラモスは構えを解き、ムーへと手を差し伸べた。
「…だから言ったはず。魔王なんかの家来になるつもりなんかない。」
 しかし彼女は首を横に振り、炎のブーメランを手にバラモスへ向けて飛び掛った。
「待て!!ムー!!」
 カンダタが止めようにも既に遅く、彼女は既に間合いに入っていた。
「…残念だ。」
 バラモスはムーの炎のブーメランを彼女の右腕ごと素手で掴んで捕らえた。
「!」
「……死して我が力の糧となるが良い。」
 ムーが空いた左手を自分の顔へと向けるのも気にせず、バラモスは彼女を捕らえた掌に魔力を込めた。
「ムーッ!!離れろ!!」
「ザキ」
「…!!」
ドクンッ!!
 直接死の波動をぶつけられて、ムーの心臓が悲鳴を上げた。
「…ムーーーーーーッ!!!!」
 カンダタはどこまでも残酷なまでに突然な…大切な者の死に逆らうように大声で叫んだ。

「……な…!」
 突如として後ろに現れた白い騎士の様な出で立ちをした大男に、マリウスは僅かに驚いた…
―速い!!
ギィンッ!!
 …が、すぐに対応して、彼が持つ嘆きの盾が大男が振るった大剣を受けた。
「…喰らいやがれ!!」
 盾の持つ特殊能力…受けたダメージを力へと変換し相手へと返すはずだったが……。
『ハァッ!!』
 何事も無かったかの様に、大男は信じられないスピードで手にした大剣を斬り返してきた。
「…げっ!?」
 如何に力がある者でも、人間が身の丈ほどもある鋼鉄の塊を軽々と振り回す様には畏怖…或いは驚愕の念を抱かざるを得ない。
『…ほぉ、これを受けたか…』
「…いや…あんたの方が断然凄いから…」
 マリウスは巨大な分厚い鉄板の様な剣を容易く扱う白い騎士に敬意とも取れるような呻き声を上げた。
『…ふむ、如何に盾しか持ちあわせておらず守りしか出来ぬとはいえ、中々の逸材だな。呪いの影響も受けていない様ではないか。』
 一方の大男も、呪われた装備を身に付けていてもマリウスが動きを鈍らせる様子が無い事に、大男は心底感心したような口調でそう言った。
「………呪いの装備は誰にでも扱える訳じゃねえ。何だって破壊の剣なんか…」
『……純粋に力を引き出せたからだ。戦士に余計な感情は要らぬ。』
「…おっそろしいヤツだぜあんた。もはや雇い主…って言えないじゃんか…。」
 破壊の剣をカルスに与えたのは彼本人の話からすると恐らくはこの男だろう。人格を壊しかねないと分かっていながら呪われた装備品を人に与えたのだ。
『ふ…何を馬鹿な事を。これは彼も承諾した契約の一つだ。』
「ああそうかい…。けどまあ…気に入らないな…。」
 契約…互いの納得の上でのやり取りを決定付ける物…だが、マリウスはカルスと大男の今の状況を見ていると、それが間違った物と言えなくても…どこか不自然に感じられた。
『…そんな瑣末事などもはやどうでも良かろう。』
 再び大剣がマリウスへと振り下ろされ、スレスレでかわしたその地面が思い切り抉られた。
「くっそーっ!!埒があかない…!」
 懐にもぐりこまれた時の為の短剣を引き抜き、応戦していたが…リーチが短い為に、大剣の間合いに潜り込んだ途端に手痛い反撃がくる今の状況ではあまり使えなかった。
『ふむ…その程度なのか?』
「……冗談じゃねぇ…。状況が悪ぃだけだ。」
 初めからまともにやりあう気は無い。自分の目的は敵の足止めである…。初めは破壊の剣を振り回すカルスを倒せばそれで終わりであったが、思わぬ伏兵…目の前の男が現れた事で予定が変わってしまった。
『…そうだな。このままでは私の勝ちは決定的だな。どれ…』
 白騎士は巨人のような手を、近くに落ちている破壊の剣へとかざした。すると…
パシッ!!
「…!」
 回転しながらマリウスの方へと飛んでいき、その手中に納まった。
「…な…何しやがる…!!」
 彼が突然の事にうろたえている傍で、大男は地面に倒れているカルスへと向き直っていた。
『悪いがお前にくれてやったこの剣、返してもらうぞ。』
「…好きにしてくれれば良い。どの道俺は役立たずで死んだも同じだ。」
『ふむ…まぁお前は良くやっていた。…これを受け取れ。』
 彼はカルスにずっしりと金が入った袋とキメラの翼を投げて寄越した。
『せめてもの餞だ。さぁ、行くが良い。』
 カルスは無表情のまま頷くと、キメラの翼を放り投げて空高く飛んでいった。
「…あんた、良い奴なのか悪い奴なのかわからねぇな…。」
『…何、ほんの気まぐれよ。ともあれ…これで得物は揃った。行くぞ!!』
 ふ…と一息ついたその直後、白騎士は剣を振りかぶって突進してきた。
「……破壊の剣か。面倒なモン押し付けられたとか思ったけど、案外使えそうじゃねえか!!」
 施された魔剣が手にしっくりと来る感覚を味わいながら、マリウスは迫り来る巨大な剣を破壊の剣で迎えうった。
 
「……。」
 ムーはバラモスの腕の中で俯いたまま身じろぎ一つしなかった。
「……ムー…!」
 カンダタが呼びかけても、ムーはピクリとも動く気配を見せなかった。
「バラモス…!…てめぇええええっ!!」
 彼は怒りに任せてバラモスに躍りかかった。自慢の巨大な斧がバラモスの脳天目掛けて振り下ろされた。
ギィイイインッ!!
「…気の早いことだな。」
 バラモスは王剣の刃でそれを受けながらフンと鼻を鳴らしながらそう言った。
「…てめえがムーを……!」
バギャッ!!
 切り結んでいた体勢からの追撃を薙ぎ払う様にして受けて、一度距離を取ったバラモスの腕の中からムーの体が離れた。
「……!」
 しかし、支えを失って…それでも尚、ムーは倒れていなかった。
―…理の欠片たる矮小なる物、集いて融け合い、齎されるは根源の光…!
「…ムー!!」
 微かに聞き取れた呪文の詠唱に怒りに荒れ狂っていたカンダタの心に光が差した。

「イオナズン!!」

ドガァーーーーンッ!!!!
 大地…大気…否…空間そのものを揺るがす大爆発が、バラモスを中心として巻き起こった。
「生きていたのか!!ムー!!」
 その強烈な呪文…イオナズンを唱えた張本人にカンダタは駆け寄った。
「………違う…。」
「…!?」
 しかし、彼女が小さく返した返答に、カンダタは思わずその足を止めた。
「……メドラ。」
 そんな彼に向かって…ムーは呟くようにそう告げた。
「……!!…お前…!」
 彼女自身の口から本当の名…それ自体意外な言葉…それが出た事が示すのは…?
「記憶が…戻ったのか…??」
「…少しだけ。……でも、何か空しい…。」
 赤い髪の少女は頭に軽く手を添えながら小さく言葉を続けた。
「…私の中から…何かが消えてしまいそう。」
「…ちょと待て!!何言ってやがる!?しっかりしろ!!」
 何を言いたいのかがまるで察せず、カンダタは思わず彼女の肩を揺すった。
「…ムーであるための何かが……」
「…!!!」
 それに構わず続けられた…一言に…
「…まさか…”ムー”の記憶が…!?」
 ムーではなくメドラ…それが今話している少女の名とするならば…いつも共に歩んできた彼女の存在の行方は……?その最悪の結末がカンダタの脳裏に過ぎって…そう言葉に出た。
「…それは大丈夫。…だけど…」
 ムー…否、メドラはその言葉を否定するように首を振った後…別の方向を見やって…
「今話している場合じゃ無い。」
 何の感情も込められていない冷たい口調でそう告げた。その抑揚から、先程から微かにあった危機感が…確かな物になりつつあるのを感じながら…カンダタはその根源たる者に斧を構えた。
シュゴオオオオオオオッ!!!
「…ぐぅっ!?」
 炎を纏った熱風がカンダタとメドラへと吹き付けた。
「…フン、フバーハの上からではこの程度しか効かぬか…。」
―…ち…!イオナズンなんか喰らってもまるで堪えてねえのかよ…!?
 攻撃呪文の中では最上位に属するとまで言われ、大爆発という純粋な力を巻き起こす破壊の呪文を受けて尚、魔王は何事も無いようにゆっくりとこちらへと迫ってくる…!
「…一瞬とは言え…我が力を使わせるとはな…。その状態であっても、中々の呪文の使い手よの。」
 バラモスの左腕の袖が破れ、その腕が露になっていた。それは明らかに…
―…人間のモノじゃねぇ……!
 大きさと言い、色と言い…人間にはありえない…巨大な黄緑色の鱗のついた腕であった。
「……やっぱり人間じゃない。」
 メドラは左腕だけを異形のものと化している王者の姿を見て、ぽつりとそう呟いた。その目には驚愕も無く、明鏡の如く澄んだ瞳にその魔王の姿を映し出した。
「左様。…未だに分からぬ奴だな。」
「…関係ねぇ…、てめぇが何考えてるのか分かりゃしねぇが、……ムーに手ぇ出して…タダで帰すと思うなよ…!!」
「愚かな…。貴様が置かれている状況…未だに理解しておらぬのかと言っているのだ。」
 言い放つと共に、バラモスは巨大化した左腕を振り上げた。
「ぬぅうううん!!!!!」
ズンッ!!!
 そして勢い良く地面を殴りつけた。
ゴガァッ!!!
「「…!?」」
 同時に突然地割れが発生し、その隙間から熱気が噴き出してきた!
「…溶岩だ!!」
 カンダタはメドラを抱えて、強靭な脚力で高く飛び上がり、木へと飛び移った。
「莫迦め!!いい的だわ!!」
 バラモスは地面から呼び起こした溶岩を操り、巨大な球の形に収束して彼らに投げつけた。
「…くっ!」
「大丈夫。」
 しかし、メドラは迫ってくる当たったらひとたまりも無いその攻撃に対しても全く動じた様子も無く、手を前にかざした。
「…!」
 それと同時に、メドラの手にルーン文字が刻まれた黒い柄の短剣が握られた。暗殺用の為か、殺傷能力を高められた大ぶりの短剣…アサシンダガーであった。
「奔流を収めし器は牙の型を取り、其は此処に宿らん……マヒャド」
バキバキバキッ!!!
 呪文の詠唱が終わると同時に、メドラが手にした短剣に魔力が宿り、マヒャドの極冷の氷の力がその柄の先から伸びて、巨大な剣の形を取った。刃はすぐに溶岩球へと振り下ろされ、それを真っ二つに切り裂いた。
「…ほぉ、それで受けたか。」
 バラモスは、事も無げに…小手調べに過ぎない技とは言えども自分の攻撃を薙ぎ払った少女を見て感嘆の声を上げた。切り裂かれたマグマは刹那で凍りつき、巨大な岩石と化して地面に落下して砕け散った。
ザッ!
 続いて氷の切っ先が溶岩溢れる中へと伸びた。マヒャドの力を収束した冷気によって急速に冷やされて、溶岩は地面の一部へと帰した。
「……。」
 同時に、アサシンダガーに宿っていたマヒャドの力も消えた。
「でかしたムー!!どおりゃあああああっ!!」
 カンダタは木の上を蹴って飛び降り、斧を回転させながらバラモスへと躍りかかった。
「そろそろ…死んどけぇえええっ!!!」
 勢い良く振り下ろされた大斧は、バラモスが持つ巨大な王剣とぶつかり合った。
ビシッ!!
「……!!」
 その二つの得物がぶつかり合ってすぐ、不快な音が彼らの耳に入った。
「もらったぁあああああっ!!!!」
 歓喜の声の主はカンダタのものだった。ひびの入った王剣へと食い込んだ斧に力を込めた。
「こ…小癪な…!!ぬぅううううううん!!!!」
 バラモスはやむなく剣を斧から逸らし、肥大した左腕でカンダタを殴りつけた。
「どうわぁっ!!!?」
 咄嗟に身を守ったが、攻撃の勢いを殺せず、彼は思い切り遠くへとはじき出された。
バギャッ!!!
 彼自身の巨体と勢いによってぶつかった木々の一つが砕けて、その箇所から上が倒れてきた。
ドシーンッ!!
「……くっ…!!」
 カンダタはその木を素早くその場から転がって避けた。
「…ぐ…!」
 一方のバラモスは、ひびの入った剣を見て舌打ちした。
「効いてるみてぇだなぁっ!!…どうよっ!!俺様の必殺技の味は!!」
 更に、殴りつけてきた左腕にも、大きな切り傷が出来ている…。
「てめぇをブッ倒すまで何度でも打ち込んでやるよ!」
「…フン、図に乗るなよ…。」
 攻撃を受けて尚健在のカンダタが斧を持ち上げてバラモスへそう挑発すると、バラモスの腕についた傷が少しずつ治り始めた。
「ハッ!!そういや魔物ってのは再生ってのが得意な奴が多いんだったっけなぁっ!!だったら…」
 カンダタはそれを見て焦る様子も無く…
「一撃で仕留めてやりゃあいい話だろうがぁっ!!!!」
そう大声で叫びながら手にした斧を振り上げて一気に駆け出した。
ドッ!!
「…ッ!?」
 しかし、飛び出した瞬間に、右肩に鋭いものが刺さった様な感覚がして、彼の足を止めた。
「…矢…!?」
 一瞬立ち止まり、後ろを振り返ると…
「…うおおおおおおっ!?」
 無数の矢がカンダタ目掛けて射掛けられているのを見て、慌てて木の陰に隠れた。
シュカカカカカカ!!
「あ…危ねぇ…!」
 矢を力任せに抜き、自身にベホイミを施しながら…避けるのが遅かったら針ネズミの様になっていたかもしれないと思い、僅かに背筋が凍るような感覚をおぼえた。
「陛下ぁーっ!!!」
「お怪我をされているぞ!!」
「下郎が!!!我等が成敗してくれる!!」
―くっそーっ!!!もう来やがったのか!!
 数百人程の足音を感じる…無数に聞こえる金属音は兵士の鎧が擦れる音だと感じられる。
「一旦引くぞ!ムー!!」
 カンダタは木の上に下ろしてきたメドラに向かってそう告げた。流石にこれだけの大群を相手にして無事で居られる保証はどう考えても全く無い。
「……。」
 メドラはすぐに木々を飛び移り、カンダタの元へと向かった。先程飛んできた矢が何本か、彼女の周りを飛んでいる魔法の盾に突き刺さっている…が、そのお陰か…彼女自身は全くの無傷だった。

「バシルーラ」

「「…っ!?」」
 しかし、合流するその直前…バラモスが放った呪文がカンダタを襲った。
「カンダタッ!!」 
 メドラは地面から離れていくカンダタへと手を伸ばすが…既に彼の体は高速でその場から弾き飛ばされていた。
「…く…くっそぉおおおっ!!!」
 急加速して最中…カンダタが最後に見た物は…普段の人形の様な無表情からかけ離れた、今にも悲痛な叫びをあげんとする程の驚愕が張り付いた表情のメドラの姿だった。