誘いの洞窟 第六話
―…あのお爺さん…最初から全部分かっていたのかな…?
 東へ歩き続け、気がついたら目的地についた。森に囲まれた小さな泉…その奥に地下への入り口がある。
 レフィルはその中に入り…更に奥へと進んだ。
「この瓦礫の山が…。…えっと、魔法の球を…」
 石のブロックを積み上げて作ったような遺跡の道を塞ぐかの如く…瓦礫の山が間に積み重なっていた。レフィルはその前に立つと、おもむろに魔法の球についているチェーンを引っ張った。
ピンッ!
バクハツマデ、5ビョウマエ…4…3…2…
「えっ?!」
ドカーン!!
「きゃあっ!!」
 爆風に揉まれ、レフィルは吹き飛ばされながら悲鳴を上げた。
「いたたたた…頭打った……。」
 レフィルは近くの石壁に寄りかかるような体勢で、瓦礫が粉微塵に消し飛び…道が開けた様子を目の当たりにした。
「…カウントダウンある事先に言って欲しかったな…。」
 レフィルはよろよろと石壁から立ち上がると、一向に収まらぬ洞窟の砂煙の中へと消えて行った。

 誘いの名を冠する洞窟の割には、それを拒む魔物の数がかなり多かった。
「あ…また出た…!!」
 レフィルは大勢の魔物達に追いかけられていた。追いつかれればおそらく生きては帰れないだろう。
「…はぁ…はぁ…。」
 後ろからは…蠍の尾と、蜂の羽をもつ魔物…蠍蜂の大群を先頭に、お化けアリクイ、アルミラージ…そしてフロッガーなる化け物ガエルまでもが大挙して、久々の獲物を手荒く歓迎しようとしている。
「…こんな数…相手にしてたらもたない…!!」
 剣を背負ったまま、レフィルはひたすら走った。
―あそこだ…!!
 ようやく願いが通じたのか、彼女の目の前に狭い通路が姿を現した。遠くから見ても一応は行き止まりでは無いようだ。レフィルは迷わずその道に飛び込んだ。
「ギラッ!!」
 ある程度進んだ所で、レフィルはギラの呪文を唱えた。炎の壁が立ち上り、魔物達にとっての行き止まりを形成した。無理して通ろうとした者達は、命こそ落とさずとも、その火力で行動不能になってしまった。

「…ふぅ。」
 魔物の群れを振り切り…レフィルはようやく一息をついた。
―…もっと体力つけておけばよかったな…。
 彼女自身はそう思っているが、皮の鎧と荷物を抱えたままでの長距離走なんて常人にできるものではない。
―最後にここを通れた人って…誰なんだろう?
 レフィルはかばんから水筒を取り出し、水を一杯飲んだ。
「…さぁ、もうひと頑張り…。」
 水筒を再度しまうと、レフィルは歩き出した。

「…大きな扉……。」
 レフィルの目の前に古めかしい扉がそびえ立っていた。
「駄目…。普通に押しても引っ掛かって動かない…。」
 彼女が扉を押すと…ある程度までは二つ一緒に前へ動いたが…二つの扉の間から何かがぶつかる音がしてそれ以上動かなかった。どうやら鍵がかかっているようだ。少し動いたのは古いものだからなのかもしれない。
「…そうだ、鍵穴あるかな…?」
 そこまで苦労することも無く、鍵穴はあっさり見つかった。
ガチャッ。
 盗賊の鍵は、鍵穴に吸い込まれるように差さり、捻ると鍵は呆気なく開いた。
「…やった。」
 レフィルがその扉の片側を押すと鍵によりつながれていた二つの扉はついに離れた。レフィルはその扉を押して、先を進んだ。
「「「「メラ」」」」
「え?」
ゴオオオオッ!!
 無数の火球が、レフィル目がけて飛んできた。
(第1章 誘いの洞窟 完)