プロローグ

 人型でありながら翼を持った巨大な鎌を持つ異形の男が緑の髪を持つ少女と対峙している…!少女の方は恐怖を抑えた様子で肉厚の剣を構えている…!!
「ふんっ!!」
ギィン…!!
「…!!」
ガラガラガラ!!
 一閃を交えて勝ったのは当然男…否、悪魔の方だった。少女は剣を落として村の中央の組み合わせられた木にぶつかりその瓦礫に飲み込まれた。
「…メラゾーマ!!」
 続けざまに悪魔が唱えた呪文が発動し…巨大な火球が天より彼女目掛けて舞い降りた。
「…あ……!!」
 迫り来る脅威に少女はただ呆然とそう言う他無かった。顔には既に怯えた様子が見て取れる…!
シュゴオオオオオオオッ!!!!
 火球が地面に激突して炸裂し、巨大な火柱を上げた。そして瞬く間に燃え尽きたそこには少女の姿も薪の跡も残らなかった。
「勇者を仕留めました!!」
 悪魔は高らかに周りの同志達を束ねる者にそう叫ぶ。
「よし!!よくやったぞ!!…後は此処にいる人間どもを掃除するだけだな……。」
「奴らは既に戦意を失っております、そう手間は掛からぬ事でしょう。」
「そうだな…お前の出る幕も無かったな、エビルプリースト。」
「初めから出る気もありませんよ。所詮は虫ケラ同然の存在なのですから。」
 巨大な体に似合わぬ理知的な答えを返し、エビルプリーストは嘆息した。
「勇者と言ってもこの程度か。下らん。ワシの血を騒がせてくれる者はもはやこの世界にはおらんようですな…。」
 青い体色の半獣の男は腰の剣を弄りながらそうぼやいた。
「ふふ、私では相手不足か?」
「おおっと、そうでしたな!これは失敬!!」
 豪傑笑いをしながら彼は頭をかいた。
「一通り掃討が終わりました!!」
「ご苦労。それでは引き上げだ!!…ルーラ!!」
 首領らしき男は天に掌を翳して移動呪文ルーラを唱えた。死屍累々の廃墟だけだった…。

 遅れてこの場に現れた青年は黙ってその惨状を目に焼き付けていた。彼が何を思っているのかは誰にも…おそらくは彼自身にも分からない…。