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4.黒き胎動2

 超竜軍団長バランの命により、少女はテランの城に先行して侵入し、その中からディーノなる少年の奪還を目指していた。この任を果たせば、彼女のドラゴンであるイース共々解放するという条件がある以上、逆らう理由などなかった。
 迷い人の町より出発する際に準備していた道具、消え去り草。先の戦いの折りにキメラの翼などと共に没収されていたが、今回の作戦に必要なものとして、他の道具共々返還されていた。消え去り草を飲むことにより、それに込められた透明化を司る魔法力が全身を覆い、姿を消し去っていた。気配を潜めたまま城の兵士達をラリホーで眠らせるか力でねじ伏せて退路を確保し、急ぎ少年の囚われている場へと向かう。
 鍵を手に開錠を試みようとしたその時、メルルなる占い師の少女が発した警鐘により、リザードマンの武人クロコダインに気取られてしまった。

「お知り合いか?」

 姿を暴かれたと共にレオナという少女が見せた反応を訝しみ、クロコダインは首を傾げながら尋ねていた。別所にて接点があったようだが、当の彼女らが向け合う視線は決して友好的なものではない。

「ええ……でも、やっぱり私達の敵だったのね。一体バランに何を吹き込まれたのかは知らないけれど、ダイくんを奪おうというのなら、容赦はしないわよ。」

 ベンガーナの商店街の戦いの折りにも、少女はダイに対して一切の加減をしていなかった。自分のドラゴンを守るため、そして相手が勇者と知らなかったと言えども、レオナにはその態度が気に入らない様子だった。
 こうして敵に回ったのも、少女が己の目的を優先させた、そのためにバランと与するのも厭わなかったためであり、皮肉にもレオナの予感も間違っていないことになった。

「あなたは、一体……?」

 メルルもまた、ここに再びまみえることになった少女に対して怪訝な表情を浮かべていた。ドラゴンを駆っていたといえどヒドラを単騎で撃退した先の戦いぶりは勿論だが、すぐ近くに現れるまで気づかせなかったことが何よりも腑に落ちない。生まれ持った探知の力に己なりの自負を持っているがために、尚更の疑問を抱いていた。
 口々に思うところを告げつつ、身構えている彼らに答えるかのように、少女は空いた右手を振り上げる。

「!」

 彼らが何か握られているのを解するのも束の間、それは地下牢の床に力強く叩きつけられると共に爆ぜて、黒い煙を辺りに振りまいた。

「くっ……!? 煙幕!?」

 せき込みながらも、体に然したる影響はない。それが隠密が身を隠す手段として使う簡易な煙幕であるとすぐに気づき、レオナは慌てて辺りを見回した。

「御免っ、唸れ真空!!」
「!」

 敵を見失い迷うところに、クロコダインが注意を促しつつ、手にした欠けた大斧を掲げて叫んだ。はめ込まれた宝玉を中心に地下牢の階層全体に暴風が吹き荒ぶ。
 少女の投じた煙玉を吹き飛ばし、そのまま黒煙をも吹き払っていく。

「姫!そこです!!」

 程なくしてクロコダインに再び隠さんとした姿を捕捉された。正面からの戦いを避け、一刻も早く少年を連れて離脱するべく鍵を拾わんとしていたが、その行動を読まれてしまったらしい。

「ヒャダルコ!!」

 クロコダインの指示に従い、レオナはすぐさま呪文を唱えて攻撃を仕掛けてきた。凄まじい冷気が手のひらに集い、かざした先にいる少女に向けて放射され、通り過ぎた道をも凍らせていく。

「マホステ」

 冷気の流れが直撃する直前に、少女が唱えた呪文が紫の霧を呼び起こした。

「……! それは……あの時と同じ!!」

 ダイとの戦いでも見せた呪文をかき消す力。マホステの霧に触れると共に、魔法力により保たれていたヒャダルコの力がみるみるうちに霧散していく。
 すかさず少女はレオナへと反撃に転じるべく斧を手に斬りかかっていた。凍り付いた通路をものともしない足運びで突進してくる姿を前に、レオナは一瞬畏怖の念にとらわれるも、すぐさま素早い動きで回避を試みる。

「避けきれない!? ……あぐっ!!」

 だが、少女の斧の軌道はその避ける動作すらも見切るように深く的確に振るわれていた。胸元に位置する小さな赤い宝玉を無骨なバトルアックスの刃により粉砕し、鋭い斬り返しにより斧の腹の殴打を加える。

「姫!! ぬうっ!!」

 レオナの危機にクロコダインが一瞬狼狽するのも束の間、少女はすぐに踵を返してそちらに斬りかかる。反応が遅れるものの、重厚な鎧と堅牢な赤い鱗に阻まれて、力任せに振り払われていた。

「身かわしの服まで見切っているの、こいつ……!」

 打ち据えられた痛手の余韻を受けながら、レオナは服の胸元に散る宝玉の欠片を見て歯噛みしていた。単なる旅装ではなく来るべき脅威のために少しばかりの工夫を凝らしたもの。それは、敏捷性を高めて相手の攻撃をかわしやすくする魔法の込められた衣、”身かわしの服”と同様の原理に基づくものだった。
 当然一定以上の技量を有する者には通用しない小細工に過ぎない。それでも足場の悪さを初めとした地の利をもひっくり返して尚余りある力の差でもあるというのか。そのような心情を伺い知ることができた。

「…………女を斬るのは不本意だが、やむをえませんな。」

 戦いから離れたテランという国と言えども、ただ一人で兵士全員を戦闘不能に追い込んだだけのことはある。武人として女を手にかけることに些かの抵抗を覚えるものの、これだけの使い手を前に油断はできない。
 斧を握り直して構えながらも、それでも油断などとは違う何かの確信からか、その独眼は冷静に少女を見据えていた。




 遠くにテランの泉を、そして城を臨むことのできる、道の終端。樹海と山に囲まれた美しき盆地の内に位置する小さな国への入り口を目前にして、戦塵が立ちこめている。

 
「効かねえ……ぜ……。」 


 手甲に覆われた拳を腕で受けて、苦悶に表情を歪めつつも、ポップは踏みとどまりつつ不敵に笑いかけていた。

「闘気……なるほど、それがスカラか。魔法使いにとってはさぞや重宝する呪文だろう。」

 防御呪文スカラ。魔法力によって引き起こされる力によって、身を守るための呪文であった。それを自らに施したポップの体の内より立ち上る緑の光が彼の体をくまなく覆い、バランの攻撃を受け止め、あまつさえバラン自身をも押し返していた。

「へっ……地獄に仏って奴だな。これであんたとどうにか戦えるんだからよ。」

 本来取るに足らぬ敵が見せる足掻きに苛立ちを通り越して感心さえしているバランを余所に、ポップはその新たな力で辛うじてでも戦えることに満足していた。

「ボミオスまで効いてくれたのはラッキーだったぜ。あとはあんたの竜闘気が尽きるまで耐えぬきゃいいってことだ。」
「……言うだけのことはあるようだな。」

 バランにもまた、竜闘気に混じりそれと似て非なる別の力がまとわりついていた。鈍化呪文ボミオスの黒い光が体を重い鎖のように縛りつけ、その動きを制している。竜闘気に対しては呪文による攻撃が届かないはずだが、酷似した類の力を操るためか、意外なことに通用していた。
 本来ならばヒュンケルは勿論のこと、目の前の魔法使い程度に足止めされることなどなかったが、このボミオスとスカラの呪文により、行く手を阻まれている。小さくも手強い思わぬ敵の出現を前に焦燥はなく、不思議な程にバランも落ち着いていた。

「だが、それも無駄な抵抗でしかないことはお前が一番分かっているのではないかね?」

 それでも、ポップ自身が言ったように竜闘気が尽きるまで持ちこたえることなど、実際に出来るはずがない。彼の主力である攻撃呪文が効かない以上正面から太刀打ち出来ず、バランも全力でかかるまでもなく倒す術など幾らでもあるだろう。

「やかましい!! オレはもう逃げねえって決めてんだ!!」

 そうした時間の問題と知りながらも、ポップは一歩も引かずに精一杯の啖呵を切っていた。親友を失うことが分かっていることで、かえってその運命を変えなければと、彼を最後まで足掻き続けさせていた。

「アバンの使徒、と言ったか。人間とはいえ、ディーノも良い師に恵まれたものよ。」

 追いつめられて予想もつかぬ反撃に転じてきたとはいえ、ただの矮小な人間がどうしてここまで抗えようか。身のこなしや呪文を極めたとて、人間程度がドラゴンの騎士に勝る道理はない。
 そんな死地にあって尚、勇気を持って希望を見いださんとする。勇者として戦ってきた息子を鍛え、力に目覚めさせた教えを受けてきた少年を通して、その師たるアバンなる人間の力を感じることができた。
 


 幾度とない風切り音と強く踏みしめられる足音、そして何度かの剣戟が地下牢に鳴り響いている。レオナやメルル、ナバラが見守る中戦うクロコダインに、少女は正面から対峙していた。

「無駄だ!! その程度の力ではオレに勝てると思ったか!!」
 
 振り下ろされる斧とその巨駆からくる剛力を交えた、クロコダインの純然たる力任せの戦い。繰り出される一撃一撃の重みはあのバランですら比較にならず、まして技でいなせる類のものではなくなかなか間合いを詰めることができない。
 反撃に転じるにしても堅牢な鱗に覆われた外皮と重厚な鎧に阻まれて生半可に斬ったところで傷一つつかず、このまま押し切られてしまうのも時間の問題だった。

「そこだ!!」

 再度斧を交えて弾かれて大きく体勢を崩したところを好機と見て、すぐさまクロコダインが猛追し、手にした大斧を叩きつける。


「バイキルト」


 衝突の直前に至るまでに、少女は呪文を詠唱していた。全身の血が熱くたぎるような昂揚感と共に、己自身の体の内から力が沸き上がってくるのを感じられる。闘争心に任せるままに少女がバトルアックスを横に薙ぐと共に、クロコダインの力が、全身が砕けるような衝撃が襲い来る。

「むっ!」

 だが次の瞬間、止めとばかりに振り下ろされたクロコダインの斧が弾かれ、その軌道が大きく逸れていた。真っ二つにするつもりで放ったはずの一撃が打ち払われ、少年を閉ざしていた牢の鉄格子を次々と斬り裂いていく。

「あれは、闘気……? 呪文で呼び起こしたというの……?」

 倍近い程の腕力の差を戦いの中で実際に露呈していたはずの少女が見せた思わぬ反撃の正体を、今の少女の姿からレオナは朧げながら察していた。彼女の体の内から発生し続けている赤く揺らめく光が与えているのは、この世界の上位戦士が操ることを得意とする闘気と呼ばれるものに酷似していた。
 魔法力により体の内に作用して、秘めたる力を引き出す強化呪文・バイキルト。己で力を高められるこの世界の者達には本来必要としないがためか、廃れていたはずの呪文だった。

「無駄だ!!」

 バイキルトにより強くなったとは言えども、身体を頑健にすること自体はかなわない。元の力の差も相まって、打ち合いにおける優位性はひっくり返ってはいなかった。攻勢に転じるにしても単に武器の応酬を繰り返す衝撃だけで体力を奪われていき、隙を見て回復呪文を合間に施すも受ける痛手が上回っている。気を抜けば一瞬にして倒されてしまう程に追い詰められていた。

「降伏しろ、もはや勝負は見えている!!」

 明らかな実力差のある相手との戦いは幾度となく味合わされて来たが、相手の動きや特性を見抜いて優位に進め、時には逃げに徹することで生き延びてきた。今度は相性の悪さからその弱所すら突けず、逃げることもできない以上、手詰まりになるのも最早時間の問題だった。
 ならば尚更のこと、残された道を全力を以て駆け抜けなければならない。目に映る敵全てを滅ぼしてでも活路を開かんと、少女は手にした斧を握る力を強める。

 その時、不意に己の意識が急速に身体から引き剥がされる感覚を覚えていた。バズズの魂の剣で貫かれて、内なる存在を引きずり出されようとした時と同じような激痛が心臓を通じて伝ってくる。

 やがて内なる血潮が凍りつくように身体が冷たくなっていくのを感じると共に、ゆっくりと迫り来るクロコダインの斧が目に映った。一瞬視界が白転するすると共に、金属の固まりが鈍い音を立てて、石に突き刺さる音が聞こえてくる。
 考える間もなく、日頃に培ってきた動きのままに、無心で反撃を繰り出すと、巨駆の竜人が形振り構わずに後ろに跳躍して回避行動を取った様が見えた。

「ああっ、真空の斧が!!」

 地下牢の壁に突き刺さったものの正体は後退するクロコダインの取る得物・真空の斧だった。剣戟すら奏でることなく、少女の斧によって半ばから断ち切られてその手元から離れている。

「氷の……魔法力か。」

 クロコダインの鎧にもまた、一閃されてできた傷跡が刻まれていた。驚愕を隠せぬレオナとは対照的に、彼はそれを引き起こしたであろうものの正体をその独眼で静かに見据えていた。
 対峙しているだけで凍てついてしまいそうな程の冷気が吹き付ける奥に、斧を構える少女の姿があった。その身体には先程まで纏っていたマホステによる紫の霧もバイキルトによる内なる赤い光もなく、代わりに白く輝く冷気が渦巻いていた。それが斧を取る双手を伝い、重厚な刃に塗布されるかの如く覆い尽くしている。 

「あれって……暴走させているの……?」

 魔法力と斬撃を同時に加えることで、常軌を逸した現象を引き起こしているものと推察できたが、何より彼女を覆う冷気の力が尋常でないことを訝しんでいた。戦い方からして純然たる戦士と言って差し支えない程の少女が、上位の呪文に匹敵するものを放出し続けている。

「……そう、やはりあなたは……」

 どう足掻いた所で、人間に出来る芸当ではない。理を越えるような真似をしてのけたことから、レオナが彼女を見る目から困惑が完全に消えていた。魔王軍の力に任せて虐げられるばかりの人間と明らかに違う、異質な存在を送り込んできたのは碌でもない者達には違いないだろう。
 少女を、そしてそれをこの世界に呼び込んだ者に対しての敵意を露わに、レオナは彼女を睨みつけていた。

「ぬぅうっ!!」

 武器を失ったクロコダインがたたらを踏んでいる隙を突いてその懐に飛び込みつつ斧を振るう。吹雪を纏った武器がクロコダインの鎧を易々と引き裂き、その切り口を凍てつかせていく。

「かあああああああ!!」

 氷のオーラに臆せずに拳を打ち込み距離を取りながら、クロコダインは大きく吸い込んだ息を一気に吹き付ける。高熱を帯びた息吹が冷気を相殺しながら少女へと向かう。

「イオラ」

 熱気に吹き付けられるその直前に、少女は手のひらをそれに向けてかざしながら呪文を唱えていた。空間の凝集により、クロコダインの息吹が吸い込まれて、そのまま彼へと返される。

「ヒートブレスまでいなすとは侮っていたようだな……流石は竜騎衆といったところか。」

 向かい来るイオラに対し、そのまま己の息吹・ヒートブレスで迎撃しながら、クロコダインは少女の手並みに純粋に舌を巻いていた。
 バランが送りつけた刺客とあれば、その最大の手駒である竜騎衆かそれに準ずる戦力であると踏んでいたが、よもやこのような人間の娘であるとは思っていなかった。事実勝負はこちらが優位に運んでおり、異質な力があった所でそれは揺るぎようがなかった。
 だが、本当に恐るべきは、その不利な状況の中で踏みとどまっていることにあった。迎撃の機会を誤ることなくかつ見逃さず、本来一撃で倒されているはずの中で幾度となくクロコダインの攻撃をしのいでいる。異質な能力でも見慣れぬ呪文でもなく、躊躇いのない行動を裏付ける経験。表面から見える未熟さを垣間見せる少女戦士の一面などではない裏の顔を、彼は誰よりも早く垣間見ていた。

「だが!!」

 相手が見た目通りの戦士などではないと見抜いた以上、武人の誇りなどという体面で手加減などをしている場合ではない。ダイ少年に手を出す脅威に対する余計な情を振り払わんとするかのように、クロコダインはまず一喝しつつ、もう一つの得物を取った。
 まがまがしい雰囲気を醸し出す鉛のような光沢の金属で拵えられた先端を有する、操り手たる彼の巨大な体躯を以てしても両手で繰らねばならぬ程の長大な戦鎚だった。

「オレはバランからダイを守らねばならんのだ! この命を賭してでもな!」

 己にも言い聞かせるかの如く、クロコダインは少女に向かってそう告げながら、手に取った戦鎚を大きく振りかぶった。鎚の頭に彼の右手に集まる闘気が流れ込み、その一面に集中していく。地下牢全体に伝播する程の最初の一撃の全てが、あの中に凝集されていると解するに時間はかからなかった。

「許せ娘よ!!」

 クロコダインの声が聞こえると共に、目にも留まらぬ早さで戦鎚の薙ぎ払いが放たれる。反射的に構えたバトルアックスが粉砕され、そのまま少女の胸部鎧に直撃した。
 無意識の中での防御の反応も空しく、彼女の中にこれまでの比でない、骨を砕き臟腑をも潰さん勢いの衝撃が伝うと共に、その身体は血の軌跡を描きながら壁へと投げ出されていた。石壁が砕け散って天井も崩れ落ち、少女はその土砂の中へと埋もれていった。

「倒したか……?」

 阻むものごと侵入者を完全に打ち砕く手応えはあった。奥の手を使ったと言えども、あまりに呆気なさ過ぎる幕引きに釈然とせず、クロコダインは思わずレオナ達の方を見やっていた。

「魔神の金槌による獣王会心撃をまともに受けたんですもの、無事じゃ済まないわよ。」

 砕けた石壁の奥からの気配が消えたのを確認して、レオナは満足そうにクロコダインに頷きながらその手に握る得物を一瞥しつつそう答えていた。
 魔神の金槌、それは切り札となるであろうことを想定していつからかクロコダインが調達していた武器だった。常人には持ち上げられない程の重さと大きさも、クロコダインの剛力を以てすれば恐るべき利点へと転ずる。何者であろうとも防ぎようのない破壊力を前に、侵入者も敢えなく倒された。

「……。」

 同じ人間という認識すらないレオナの態度を前に、クロコダインは複雑な心境を抱いていた。確かに怨敵が遣わし、ダイを彼らから引き離さんと企む憎むべき敵であることには間違いないが、それが倒されたことに必要以上の安堵を感じているようにも思わされる。その正体が一体何であるのか、彼女の笑みに浮かぶ不気味な雰囲気を前に問えずにいた。

「!!」

 不意に、牢の中にいる少年の額に巻かれている布の下から、目映いまでの光が輝き始めていた。それを前にして、レオナだけでなく全員の目が見開く。

「ダイの紋章が……!! 来おったか、バラン!!」

 それが意味することを、この場の誰もが知っている。竜の紋章の共鳴により、ここに迫るもう一人の超越者・真なるドラゴンの騎士たるバランの接近を知るところとなった。


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